流浪少女
あれだけ軒を並べていた店が疎らになると、今度は民家が軒を並べ始めた。

民家の明かりも疎らで、今がどれだけ遅い時間帯かが想像出来る。

やがてアスファルトの道が無くなり、土が固められただけの道になると、民家も疎らになって来た。

それからもう少し歩いた先に、目的の建物はあった。

「ありましたね。廃墟が」

「あれか」

鉄格子の門は開かれたままになっており、右側が壊れて庭に投げ出されていた。

黒壁のその屋敷には電気は勿論付けられては無く、貴族が住むようなしっかりとした建物の為か、この夜の暗がりの中不気味さを醸し出している。

人が住んでいないとされるこの屋敷。

しかし、不思議な事に庭の芝生が綺麗に整えられていたのだ。

やはり、誰かが居るのだろうか。

屋敷の入口の扉に立ち、深呼吸をする。

「入りますよ、お嬢様」
「うむ。心の準備は出来ておる」

扉に手を掛けて、そうっと開ける。と、突然大きな物が落ちる様な、ゴトンっという音が屋敷内に響き渡った。

「な、何だ!?」

「誰かが居るようですね」

ティスは、肩に掛けていた茶色のバッグからランタンを取り出して目の前を照らし出した。

左右の壁に電気のスイッチを探して押してみるも、やはり明かりは付かず、天井を見ると明かりを照らすはずの電灯が取り外されていた。

「付かないはずですね」

軽く溜め息をつく。

「暗いですが、このまま進むしかありません。
大丈夫ですか?」

「問題ない。誰が居るのか、早く突き止めるぞ」

「はい」

ランタンの明かりを最大にして、屋敷内に足を踏み入れる。

上へ上がる階段が正面にあって、左右にはそれぞれの部屋へ続く出入り口の扉があった。

「どちらから行きますか?」

「そうだな、ティスに任せる。ランタンを持っているのは、ティスなのだからな」

「畏まりました。
それでは、絶対に離れないで下さいね」

「解った」

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