流浪少女

まずは、右側の部屋に入った。

「ここは……」

最初に目に入ったのは、木製の椅子。

木製の大きなテーブルに、そのテーブルを囲む様に椅子が数脚置かれてあった。

椅子もテーブルも、見事な鳥の彫刻が施されてある。

「ダイニングルームの様ですね」

周囲を照らして人が居ないのを確認していると、一番右奥の窓ガラスが割られている事に気が付いた。

歩み寄って更に調べてみる。

割れた窓ガラスの破片は、絨毯に散らばったままになっていた。

大きさから見ても、誰かが侵入した跡と見て間違いないだろう。

「この部屋には、誰もいないみたいです」

「うむ。他の部屋に行こう」


次に入った部屋は、屋敷の入口から見て左側の部屋。

「こっちは、台所……と言うより、厨房ですね」

大きな流し台が奥に一つと窓がある方の壁に一つ、出入り口の扉がある方には、巨大な冷蔵庫と食器棚があった。

「余程の大家族だったのだな」

「その様です。さて、他を周りましょうか」

「うむ」

踵を返して厨房を後にすると、再び奇妙な物音が響き渡った。

先程と同様に大きな物が落ちる様な音に加えて、ガシャンっという窓が割れた様な音――

かなり近くに聞こえたというのに、人の気配は全く感じられない。

「気味が悪いな」

少女がぼそりと言う。

「早く済ませて、戻りま―…」

そこまで言い掛けて、ティスは何かに気付いたらしい。

少女を自分の背中へと押しやり、飛び掛かって来た何かを片腕で受けて、もう片方の腕で壁際へと流す。

次に聞こえて来たのは、壁に激突した音と男性の呻き声。

急な攻撃を確かに受けたはずのティスだったが、壁へ流した時の手応えが無かったのに驚いた。

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