野良猫みたいな男 ■
「--なぁ。
なんでそんなところに座ってるの?」
後ろから彼が声をかけたけど
返事もする気も振り向く気もなく、
ただボー然と玄関のドアを見つめて
力なく、座り込んでしまった私。
「なぁ。アサコ、なんで泣いてるんだ?」
ようやくソファーから離れる気になったんだろう。
私の後ろから
顔を覗き込んだ彼は
少し驚いたように、じっと私を見つめた。
「--あなたがっ
変なこと言って、大輔が誤解して・・・
でも…大輔は、あんなに私が違うって言っても信じてくれなくて・・」
ぽたぽたと涙が頬を伝う。
支離滅裂なのは解っている。
でも、うまく言葉にできなくて、嗚咽と涙だけが流れる。
「---」
彼は少し首をかしげて、私の目の前に座り込んだ。
じっと見つめられる深いグリーンの瞳。
伝う涙は私の手の中のカギにも落ちて
あぁ、大輔とは『終わった』のかもしれない
という、
何とも言えない気持ちになって、
また涙があふれた。