野良猫みたいな男 ■

「あっ。やだ。
 もう、時間がないじゃないっ。」

ふと時計に目をやると6時30分を少し過ぎたところ。
待ち合わせに遅刻しちゃう。

ちゃんと、
大輔と仲直りしなくちゃ。


「あー、行ってらっしゃい。」

ナギサがヒラヒラと手を振る。

「ちょっと・・・
 私が帰ってくるまでいる気?」

「いるけど?」

「---大輔とこの部屋に来るかもしれないのにっ!
 だからーーー」

「ダイスケって。あぁ・・・

 じゃぁ、仲直りしたら連絡して、
 オレ、ちゃんといなくなるから。
 
 ダメだったらアサコを慰めてやるから。」

ふっと優しく笑って、ぽんと頭を撫でられる。

ーーーっ。だからその笑顔がっ。

かぁっと顔が紅くなる。

一瞬ぼーっとナギサを見つめてしまった私に、ナギサがメモを渡す。

電話番号だ。


もう、いろいろ言いたいことがあるけど、
そんな文句を言ってる場合じゃない。


「もぉっ。
 じゃ、あとで連絡するからっ。」

「いってらっしゃい。アサコ。あー、口紅つけすぎじゃん?」

ナギサに、唇を親指でぐいっと押し付けられて、
また、顔が熱くなるけど、
ソレを振り払うように、私は急いで部屋を後にした。


もうっ。
なんなのよ。あの居候!!!!


< 30 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop