野良猫みたいな男 ■
いつものバーのカウンターに座っていると、
目の前にすっと綺麗な色のカクテルを出された。
「--あのっ。」
顔を上げると、
いつものバーテンがにっこり笑って
「いつもの彼はまだですか?
ソレとも喧嘩ですか?」
「え?」
「眉間にしわ寄ってますよ。
そんなに 思いつめたらダメですよ?」
「---ふふ。
ありがとうございます。
今から彼が来るんですーー。
でも、私が怒らせちゃって・・・」
「そうでしたか。
ほら、噂をすればーーじゃないですか?」
バーテンの彼が入り口を指差した。
スーツに身を包んで、
仕事帰りのサラリーマンって風貌。
大輔だ。
大輔はいつものように、軽く店内を見回して、
カウンターにいる私を見つけて
隣に座る。
時間は
7時30分。
ちらりと携帯電話に目をやる。
遅れるなら連絡してこればいいのに。
大輔のちょっと嫌なところ。
「悪い。遅れて。」
にこりと笑って謝られると、「うん。大丈夫」ってしか返せないし。