野良猫みたいな男 ■
店のドアを開けると、
外の熱気がもあっと体を包む。
大輔は、
道のガードレールに持たれて、
煙草をふかして、電話をしていた。
私に気が付くと、煙草を持つ手を軽く上げて合図をする。
「ーーじゃぁ、後でな。」
私が近づくと、
大輔は、そういって通話を切った。
「・・・?大丈夫?
何か、予定があった?」
「あー、大丈夫。同僚。
書類のデータを無くしたから、送ってほしいって。」
「ふーん。大変だね。」
「大丈夫。家に帰ったらパソコンからメールするから。」
大輔は実家住まいだ。
だから、
デートで私の部屋に来るけど、
お泊りは殆どない。
やっぱり実家だと、気を使うみたい。
大輔は、私の腰に手をまわして引き寄せる。
煙草を携帯灰皿に閉まって、
にこりと私に笑顔を向ける。
あ。この表情が好きだな。
思わずじっと見てしまう。
「朝子。おいで」
大輔は、私の手をとってゆっくりと歩きはじめた。
この瞬間、つながれた手が
あたたかく、私は幸せだなって感じるんだ。