野良猫みたいな男 ■
不意に、別の居酒屋から出てきた
サラリーマンのグループと目があった気がした。
「--あれっ?佐々木さん?」
「なんだ。大輔じゃないか。」
そのグループの一人が大輔に声をかけてきた。
『佐々木さん』は大輔の会社の先輩で、友人たちと飲んだ帰りらしく、
大輔に上機嫌に絡んできた。
「なんだー、大輔。デートだったのか?
・・・彼女?かわいいな~。」
「えぇ。まぁ。」
大輔は横で一歩引いてる私に
目配せをした。
私は軽く会釈をしてこの「佐々木さん」を見上げた。
まぁ、イケメン。
大輔の会社の先輩という割には幼い顔立ちで、
優男といった印象。
「大輔は今から、ホテルかーー?いいなぁ」
「やだなぁ、佐々木さん。
セクハラっすよー。飲み直しですよー」
「そうかーーいいなぁ。一人暮らしは、連れ込み放題で。」
「佐々木さんも一人暮らしじゃないっすか。」
「あはは。連れ込む相手もいないよ。
じゃあな~ばいばーい、彼女さん。」
にこにこしながら、上機嫌でその会社の先輩は手を振って
その他の友達たちと逆方向に歩いて行った。
「びっくりしたなーこんなところで。」
「そうね。」
「ゴメンな?
でも、あの人すっげぇいい人で仕事もはやくてさーー」
「そうなんだ。」
確かに、優しそうな屈託のない笑顔がいい人っぽかった。