野良猫みたいな男 ■
一瞬何を言われたかわからなくて、
ソレの綺麗な瞳をただじっと見つめた。
「---」
ただ、ソレは手をすっと差し出してきた。
なんだろうと、思わず首をかしげて、
あっ。と気が付いた。
「ごっ。ごめんなさい。急に写真撮ったりしてっ」
そうだ。
私は、勝手に人を被写体にして、
シャッターを切ったんだった。
そうよね。
知らない人が急に勝手に写真を撮ったら不愉快よね。
あわてて、
首にかけていた、デジタルカメラをソレに見せるように操作する。
先ほど思わずとってしまった写真。
ソレーーーこの綺麗な彼が猫と昼寝をしている写真。
「--へぇ。
こんな風に映ってたんだ…」
ふぅんと、仏頂面でカメラを覗き込む。
「ご…ごめんなさい。
あまりにも、いい雰囲気だったから、思わずーー。
すっ。すぐ消しますっ。」
ピっと操作をして、消去を選ぼうとすると、
私の手を彼の手がフッと抑えた。
「ーー消すな。」
「え?」