野良猫みたいな男 ■
「あ。
朝子だけど。
あの…合鍵を返してほしくて。」
『アサコ?あぁアイカギ?
うーん。
今日は仕事何時に終わる?』
「えっと…今日は7時は終わると思う。」
遅番だったから、
何もなければそれくらいの時間に。
『じゃぁ、待ってる。』
「へ?
私の部屋に上がって?」
『…そうだけど?』
「女性の部屋に勝手に入るわけ?」
『・・・アサコの部屋だろ?』
平然と何が悪いのかと言いたげなナギサに
思わず電話口でため息が漏れる。
「…もぉいい。
じゃぁ、待ってて。」
電話ではナギサのマイペースっぷりに疲れるだけだ。
もう、合鍵を返してもらったら、
繋がりなんてなくなるから
待っててもらおう。
そう思って、
電話を切った。