野良猫みたいな男 ■
「ちょっと。ナギサっどこ行くのよ?」
ナギサはすたすたと先に部屋を出て階段へと向かう。
私はあわてて
玄関のカギを閉めて、
ナギサの後を追う。
「何食べたい?」
ナギサが振り返って聞いた。
何って…
「言っとくけど、私はそんなに手持ちないわよ。
ソレに、この格好だし。
行くなら、ファミレスとかーー?」
ちょうど目に入った近所のファミレスチェーンの看板を指差す。
ナギサはちょっと眉間にしわを寄せた。
「あのなぁ。
オレが飯を誘ってるんだから、
もう少し贅沢言え?」
そんなこと言われても。
ジーパンにTシャツといった私の姿を見てから言ってほしいもんだ。
ナギサだって、
シャツは羽織ってるけど、
ずいぶんラフな格好だ。
っていうか、
「オレが誘ってるんだから」って言われても無理やり連れてこられたんですけど。
返答に困った私を
ナギサはグイっと引き寄せて、
タクシーを拾った。
た…タクシー?!
いったいどこに行くつもりなんだろう…。
若干の不安がよぎった。