野良猫みたいな男 ■
ついたところは、いかにも雰囲気のいい料亭。
門の奥から漏れる光も柔らかく、
上品に店先をライトアップしている。
間違ってもジーパン姿の私は不釣り合い。
「ちょっと。ナギサっ。」
そんなことはお構いなしに、
ナギサはすたすたと歩いていく。
躊躇していると、
ナギサが立ち止まって、めんどくさそうに手を差し伸べる。
「早く来いよ。腹減った。」
「ちょっと。
こんな格好で入れないーーー」
「ココ、おいしいから大丈夫。」
相変わらず人の話を聞かない。
ガラリと店の引き戸を開けると、「いらっしゃいませーー」という
上品な声が響く。
私たちのあまりにもラフな格好をみて
顔をしかめるかと思いきや、
出迎えてくれた上品な女性は、
にっこり笑って「いらっしゃいませ」
と満面の笑みで迎えてくれた。
ナギサはなれたように案内されて、
その女性はくすくす笑いながら、
「ごめんなさいねぇ。
またどうせナギサが振り回して、意見も聞かずココに連れてきたんでしょ?」
「えっ?!」
「個室だから、気にしないで大丈夫よ」
その上品な女性はまた、満面の笑みで朝子に笑いかけた。