野良猫みたいな男 ■

もうぅっ。

と私が不満の声を上げるより早く、
「たのしそうだな?」と言いながらふすまが開いた。


「あーー、ミノル。今日のご飯もおいしかった。」

「当たり前だろ?
 
 こう見えてもプロですから。


 あ。どうも、初めまして。
 
 松本 実(まつもと みのる)です。」


「あ。はぁ…
 
 木村 朝子と言います。」

とりあえず、丁寧に頭を下げた。

松本 実と名乗った板前さんは
にっかりと爽やかに笑った。


「へぇ。朝子ちゃんね!
 
 ごめんね~ナギサが迷惑かけてない?
 
 コイツ、自由すぎて天然だし…」

「えっ。まぁ、その…はい。」

思わず口ごもった私を、松本さんはあははと笑った。

「アサコ。
 俺、迷惑かけてるのか?
 
 傷つくんだけど?」

「えっ?迷惑かけてるじゃん。
 勝手に人の家上がったりーーー」

「そう?
 
 アサコの家だからいいじゃん?」


だ か ら っ!!!

私とあんたは
赤の他人だっちゅーーーのっ!!!

思わず思いっきり
ナギサをにらむ。


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