野良猫みたいな男 ■

あわてて電話を手に取ると
着信は「大輔」

一応、同席しているナギサに目配せをするが、
ナギサは気にも留めていないように
どうぞと、手をひらりとさせた。


「もっ…もしもし。」

『あ?朝子?
 今仕事終わったよ~。

 どうした?珍しく着信も残ってたから…
 急用でもあった?』

「ん?えっと。
 うん。今日ーーーちょっと会えないかな?」

電話で話すには
ちょっと込み入りすぎ。

ちゃんとあって話したい。


『今日?明日も仕事だし、今夜は今から予定が…』



ーーー予定って何?
---『君は大輔の愛人なんだろ?』

佐々木さんの言葉が頭によぎる。


「そっか…
 でも会いたいんだけど?」

『えぇ?珍しいな、朝子がそんなこと言うなんて』

大輔はちょっと楽しそうに返事をした。

そう?
私はいつでも
会いたいって言ってるけど、
平日は忙しいからって
大輔は休みの前にしか
会ってくれないだけじゃない。

『でも、今日はちょっと…』

ほら。
会えないっていうと思った。

なんだか
心がズシンと重くなる。

< 76 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop