野良猫みたいな男 ■
あわてて電話を手に取ると
着信は「大輔」
一応、同席しているナギサに目配せをするが、
ナギサは気にも留めていないように
どうぞと、手をひらりとさせた。
「もっ…もしもし。」
『あ?朝子?
今仕事終わったよ~。
どうした?珍しく着信も残ってたから…
急用でもあった?』
「ん?えっと。
うん。今日ーーーちょっと会えないかな?」
電話で話すには
ちょっと込み入りすぎ。
ちゃんとあって話したい。
『今日?明日も仕事だし、今夜は今から予定が…』
ーーー予定って何?
---『君は大輔の愛人なんだろ?』
佐々木さんの言葉が頭によぎる。
「そっか…
でも会いたいんだけど?」
『えぇ?珍しいな、朝子がそんなこと言うなんて』
大輔はちょっと楽しそうに返事をした。
そう?
私はいつでも
会いたいって言ってるけど、
平日は忙しいからって
大輔は休みの前にしか
会ってくれないだけじゃない。
『でも、今日はちょっと…』
ほら。
会えないっていうと思った。
なんだか
心がズシンと重くなる。