野良猫みたいな男 ■
シャワーが身に染みる。
髪の毛に落ちる水を見ると
昨日の大輔との会話が耳に残る。
『大輔って結婚してるの?』の問いに
絞り出すように私の名前を呼んだ愛おしい人。
『朝子ーーー。』
まだ彼の声が耳の奥にこびりついている。
『朝子ーーーー・・・ゴメン。』
それはどういう意味?
私をだましていたっていうこと?
通話はそこで
一方的に切られた。
私の中でも何かが切れた気がした。
あぁ。
幸せだと、運命の人だと
そんな風に思っていたのは私だけだったのかと。
シャワーのしずくが
あたたかく、
私を包む。