平成のシンデレラ
第三章 ~From her viewpoint ~


―――あの時誘ってきたのはそっちだぞ―――


嘘だ。そんな事があるはずがない。
掴まれた手首を引かれ、ズルズルと引き摺られるように歩きながら
いつ?どこで?どうして?と私は猛スピードで記憶を手繰った。


・・・わからない。


自慢じゃないけれど、これでも身持ちは固い方だ。
初体験だって社会人になってからだったし
だからと言ってそれが身持ちの固い証明にはならないだろうけれど
でもその相手と破棄したとはいえ婚約したし
交際中に浮気をしたこともない。



―――部屋へつくなり押し倒して襲ったくせに―――


ああお母さん、ごめんなさい。
香子はこんな事をする子に育ってしまいましたって…違う!


信じられない!


これがもし本当なら私には別人格が存在するのだとさえ思えてくる。
もちろん、私も大人の女だし、これまでもそういう欲情が
皆無というわけではなかった。
でも元彼との交際中も私から襲いかかるような真似は
理性に阻まれてどうしてもできなかった。


それに、だ。
もし万が一本当に本当にそうだとしたら
こんなに飛び切りのイイ男とそういう事をしたのを
覚えていないなんて・・・


なんて勿体無い事を・・・!


こんなチャンスは一生に一度だってあるとは限らないのに惜しい!
ああ、なんて馬鹿なの私。
って、違う、そうじゃない!と頭を振って我に返ったその時に
目の前の扉が開かれ、私は中へと引っ張り込まれた。
ようやく掴まれていた手を離してもらえたのは
「ほらよ」とA4サイズの茶封筒を胸元に突きつけられた時だった。


も、もしや あられもない姿を映した証拠写真?!・・・にしては
ふにゃりとした手触りと不自然な厚みがあるその封筒の中を
恐る恐る覗いて見れば、光沢のある布が無造作に入っていた。



・・・?


何だ、これ??


そっと引き出し広げて見て、絶句した瞬間に
手繰り寄せていた記憶のフィルムが倍速で巻き戻り
カチリ、とまるで頭だし機能を使った時のように再生を始めた。


「私の キャミ~~~?!」

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