「1/4の奇跡」左側の君に【完】
お父さんが・・・
「お父さんもね、
お母さんに初めてプレゼントしたのが、星時計だったの。
だからだと思う」
私は首から下げた星時計を、掌にのせて見つめた。
「そうだったんだ・・・」
拓人はまた、ベンチの背にもたれて夜空を見上げた。
「すげー・・・いっぱいだ・・・」
私も見上げると、
満点の星空が広がっていた。
「もう少し夜中になれば、冬の天の川も見えるよ」
「冬の?
・・・ていうか俺、
天の川自体見たことねーや」
私は拓人の顔を覗き込んだ。
「夏の天の川も?」
拓人は体を起こした。
「俺今まで、あんま空を見てなかった気がするよ。
それにうちの近所じゃ、星が少ないだろうしな」
拓人が私の開いたコートを閉じた。
「寒いだろ・・・」
そして、マフラーを巻いてくれた。
「帰るか」
その言葉がすごく切なくて、
まだ一緒にいたくて、
ぎゅっと拓人の首に抱きついた。
「バカ!お父さんに見られたらやばいだろって」
拓人は私の腕を掴んで、引き離そうとし。
「いいの!
見られてもいい・・・」
それにもう辺りは暗いし、
お父さんのいる天文台からは見えないはず。
「もっと一緒にいたい・・・拓人と」