「1/4の奇跡」左側の君に【完】





ちくっと感じた胸の痛み。




今日は一緒にいすぎた


いろんな拓人を見すぎた


たくさん拓人に触れすぎた




・・・あんなキス・・・




まだ、ひりひりと唇に感触が残っている・・・









悲しいぐらい電車の速度は速くて、



もうすぐ駅に着いてしまう。






「明日は、会える?」





「ごめん・・明日はちょっと用事があるんだ」



拓人は俯いたままだった。









「そっか・・・」




その時、降りる駅に着いた。



拓人は手を繋いで、ドアのところまで来てくれた。




私は、電車から降りて、拓人の方を向いた。




「今日は・・ありがと・・




また、メールするね」





ドアが閉まった。




拓人は頷いてくれた。




電車がゆっくりと動き出し、



あっという間に拓人を連れ去った。







薄暗い静かなホームに、ぽつんとひとりになった。






どうしてこんなに弱いの・・・私。




もう会えないわけじゃないじゃん。


今日はもう遅いから。


明日は用事があるから。




だから・・・






なんで、涙が出るんだろう。


高校に入って私・・



中学の頃よりもずっと強くなったって思ってた。



でも、それはただの思い込みなんだ。



何も変わってない。



弱くて弱くて・・・すぐに泣いて・・・



ひとりでいると、ダメになってしまう弱い自分。




強くならなくちゃ・・・


拓人と会えない日もちゃんと、


普通でいられるように。





私はガシガシと目をこすって、


涙をふいた。







< 118 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop