「1/4の奇跡」左側の君に【完】
3学期になった。
隣の席の拓人は、相変わらずかったるそうだった。
授業中、私はメモ帳を切り取って、
そこに
【拓人 大好き!】
と書いて拓人の隅っこに置いた。
すると、拓人はそれを開いて、
「ぶっ」と吹き出して笑った。
それにまた拓人が何かを書き込んでいた。
わくわくしながら、拓人の返事を待った。
拓人はすっと私の机にメモを置いた。
開いてみたら、
【拓人!大好き!】
↑知ってる
って書いてあった。
もう!【俺も好き】とか書いてよ!っと、
期待外れな答えにぷくっと頬をふくらませて拓人を見たら、
拓人は「ん?」と頬杖をついて、見下すようにこっちを見た。
その角度で見られると、ドキッとしてしまう。
もう、メモ書きなんてどうでもよくなってしまう。
ずるいよ拓人は。
拓人のちょっとした仕草で、
ちょっとした表情で、
私はすぐにドキドキしてしまう。
シャーペンを持つ、
関節の太いゴツゴツした指も、
頬杖をついている腕から見える、
黒い腕時計も
拓人の全てが私を夢中にさせる・・・
ずっと隣の席から拓人を見つめていたい、
このまま席替えしないでほしい・・・
そんなことを考えてしまった。