「1/4の奇跡」左側の君に【完】
3年1学期の終業式を暑い体育館で終え、
教室に戻って、自分の席でパタパタと下敷きで仰いでいたら、
詩織が前の席に座ってきた。
「夏休み、和泉とどっか行くの?」
詩織は私から下敷きを奪って、
私と二人分の風を出す勢いで仰いでくれた。
「う~ん・・・特にはないかな・・・
でも、家に来る?って言われてる」
「初めて?和泉の家」
「・・・うん。初めてだけど。。」
詩織は「ちょっと待ってて」と自分の席に戻って、
またすぐこっちに来た。
「これ、一個渡しとく」
・・・・?
「何・・・これ・・・」
「え?ゴム」
・・・・・・?????
「ごっごっ・・・・」
「こらっ!」と下敷きで頭をバシっと叩かれた。
「夏休みだし、初の部屋だし。
和泉は絶対に・・考えているよ・・うん。
和泉だって、普通の男子高校生なんだから。
ちゃんと、これ、付けてもらいなさいよ!
はい、しまって!」
私は手の中にあるゴムを、
ごそごそとポーチにしまった。
「やっぱ・・
拓人はそんなことたぶん考えてないと思うな・・」
「なんで?」
「だって、受験勉強一緒にしようかって言ってたから・・・」
詩織は下敷きをバンバン叩いて笑った。
「そんなの口実だって。
でもさ・・・本当に勉強だけだったら、
なんか・・・さみしくない?
魅力ないのかな・・とか思っちゃわない?」
魅力・・・ない・・・・
なるほど。確かにそうかもしれない・・・