「1/4の奇跡」左側の君に【完】
その時、
下から玄関のドアが開く音がした。
「あ・・・お父さん帰ってきたかも」
「マジか・・・」
手でパタパタと自分の顔を仰いでいる拓人。
「大丈夫?」
拓人の膝に手をのせて、顔を覗き込んだ。
「大丈夫・・って、誰のせいだと思ってんだよ・・・」
ちょっと睨まれて、膝から手を離した。
「星・・・見る?」
「はあ?なんでこのタイミングで星なんだよ・・」
私は立ち上がって窓を開け、空を見上げた。
「ほら、もう見えるし。
星見ると、イライラした時とか落ち着くから・・・」
拓人も立ち上がって、窓から空を見上げた。
「そこのサンダル履いて。
私、電気消してくるね」
拓人はベランダに置いてあったサンダルを履いて、
ベランダに出た。
部屋の明かりが星の光を邪魔しないように、
部屋の電気を消して、
私もサンダルを履いてベランダに出た。
「もう少し、目がこの暗さに慣れれば、
もっと星がたくさん見えるようになるよ」
私たちは一緒にベランダから空を見上げた。
「部屋からこんなにたくさん星が見えるなんて、
すげー贅沢だな・・・
俺んちなんて、窓から下見た方が星っぽいよ」
ベランダの柵に両肘を乗せて拓人が笑った。
「ほんとだな・・・星見ると落ち着くんだな・・・」
トントン
「花音入るぞー!」
ガチャッとドアが開き、
拓人と二人で、バッと振り向いた。
「なっ!!!なっ!!!なんで電気消しているんだ!!
こっ・・・こらあああ!!!!!」
パチっとお父さんが電気をつけて、
部屋が明るくなった。