「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「S大です」
「そうか・・・遠いな」
「4月から一人暮らししようと思ってます」
お父さんとお母さんは少し驚いていた。
「そうだったの・・・
あ・・・ほら、
遠慮しないで食べてね」
小皿を持ったままの拓人にお母さんが優しく言った。
「はい。いただきます」
拓人は小皿を置いて、お箸を持った。
「二人とも無事に合格できて、よかったわよね、お父さん」
「あぁ・・・そうだな」
「ね、お父さん」
お母さんはお父さんに、何度か頷いて何か合図をしていた。
「わかってるよ。
うん。
合格のお祝いに・・・どうだ、その・・・
なんだ、えっと・・・」
「お父さん!」
お母さんがお父さんの腕を揺すった。
「わかってる!わかってる!
うん。
どうだ、天文台に泊まりに来るか?」
お父さんがビールをぐーっと飲んだ。
「もうね、合格すると思って、
卒業式の次の日に、一泊コテージ予約してあるんだって」
お母さんがふふっと口元に手を当てて笑った。