「1/4の奇跡」左側の君に【完】
拓人はずっと背を向けたままだった。
こっちも向いてくれないの・・・
目も合わせくれないの・・・
私は名前を叫びたい気持ちを、
ぐっとこらえた。
しばらくそのままでいたら、
拓人の電車が先にきた。
ちょうど下りと上りの電車の待ち合わせで、
私の乗る電車も来てしまった。
私も電車に乗って、拓人の電車側のドアの前に立った。
拓人も私の電車側のドアに立っていた。
でも、背中を向けていた。
私は、窓ガラスに手をあてた。
・・・ばいばい拓人・・・
その時、
拓人がくるっと振り向いてこっちを向いた。
私をじっと見て、私の顔を指差した。
・・・・何?
そして、顎の下で、握った右手から、
人差し指と親指だけを出して、
指先をくっつけながら下にさげた。
・・・・・・拓人?
拓人は何度もその仕草を繰り返していた。
私は窓ガラスに両手をついて、
「何?」と聞こえるはずもない問いかけをした時、
拓人は窓ガラスに手をついてうなだれた。
そのまま電車が、
二人を引き裂くように、動き出した。