「1/4の奇跡」左側の君に【完】
●大学
未練
ぐだぐだと引きこもっていた春休みを終え、
私は大学生になった。
家と高校のちょうど真ん中、
電車で30分のところに大学がある。
4月のオリエンテーション、
履修の最終申請も終え、
5月、少しずつ大学の生活に慣れてきた頃の日曜日、
詩織と高校の駅で待ち合わせした。
詩織と会うのは、卒業式以来。
今日会う理由は、
4月に出産した、莉子の出産祝いを一緒に買うためだ。
「花音!」
駅で待っていたら、高校の頃の優等生っぽい詩織ではなく、
明るい髪、ゆるくかかったパーマの、
少し大人っぽく綺麗になった詩織が近づいてきた。
「詩織・・・超かわいい!」
詩織はパシッと私の肩を叩いた、
「何言ってんの!いまさら!」
あはははっと笑い合って、
ショッピングモールへと歩いて行った。
久しぶりに来た、高校の駅。
まだ、周りの景色を見ると、
胸の奥がちくっと痛む。
「とりあえずランチしよ!」
詩織に言われて、レストラン街へ入った。
「ここ、美味しいんだよね。
ここにする?」
そこは、卒業式に拓人と一緒に入ったレストランだった。
本当は、違う店がよかった。
でも、逃げていてもしょうがない。
「うん。ここにしよっか」