「1/4の奇跡」左側の君に【完】
4年生になり、研究室の仲間も、
就活する子と院に進む子とで、
自然と分かれるようになっていた。
間の講義が休講になり、大学のテラスで、
明日までの期限のレポートを作成していたら、
目の前にコーヒーを置かれた。
「お疲れ」
パッと顔を上げると、
同じ研究室の緒川くんだった。
「ありがとう・・・」
緒川くんは、背が高くて、顔が小さくて・・・
初めて会った時、拓人に雰囲気が似ていると、
ちょっとドキッとした。
「花音は、どうして院に進まないの?」
私は、コーヒーを持って笑った。
「私は、N科学館で働きたいから」
「なんでN科学館なんだよ。
花音は院に進んで、もっと上目指せるよ」
私は首を振った。
「N科学館はね、5年間びっちり科学館や天文台で働くすべを、
叩き込んでくれるんだって。
だから、私そこで5年間学んで、
その後、その経験をいかして、
お父さんのいる天文台で働きたい。
私の最終目標は、お父さんのいる天文台なんだ」