「1/4の奇跡」左側の君に【完】




勘違い・・


その言葉で、


自分の中で押さえ込んでいた何かが、


溢れ出してきた。






「んなことで、泣くな。


ほら、帰るぞ」



そのまま腕を引っ張られて、

階段を降り、


和泉は一度部室に荷物を取りに行った。





目をこすりながら下駄箱で待っていると、

やっぱり和泉は走ってきた。




外はもう暗くなってしまっていて、

こんなに暗い校舎に残っていたのは初めてだった。


校舎から出て、夜空を見上げた。




狭い空・・・





薄墨のような暗さの弱い



星の消えた空


うちから見える夜空とは違うなと、

うちとは違って、ここは都会であることを思い知らされた。



学校から駅までは、歩いて10分程。



いつもは明るい中、隣に莉子がいるのに、

今日は暗い中、隣に和泉がいる。



「和泉」


「ん?」


和泉はこっちを見ないで返事をした。



「今日は、いろいろとありがと・・」




和泉は自分の髪をくしゃくしゃっとした。



「別に。なんもしてねーけど」



私は首を振った。


「和泉って、優しいね」


口は悪いけど、優しいってこと、

今日一日だけでもよくわかった。



ちらっと体育館を覗いただけで私に気づいて、

どうした?て走ってきてくれたところ。


迷惑?ってきいたら、

お前は?って

私の気持ちを聞いてきてくれたところ。


私にはジャケットを持たせて、

ダンボールをひとりで持ってくれたところ。



駅まででごめんなって、

私の駅まで送る気持ちがあったところ。



そんな和泉に、今日一日で、


私は



私は・・・






「俺、優しくなんかないよ。



好き嫌いはっきりしているから、


嫌いな奴にはすっげー冷たいし。


だから、優しくなんかないって」




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