「1/4の奇跡」左側の君に【完】
私は『平常心平常心』と自分に言い聞かせて、
真壁さんと一緒に、子供たちを案内した。
まず、プラネタリウムに案内をした。
拓人と目が合わないように、
顔を見られないようにした。
ここで約1時間の投影。
投影中は、真壁さんと科学館にいた。
「あの男の先生、高校の頃、
花音ちゃんと一緒にきた子だよね」
私は、ハッとして真壁さんを見た。
「やっぱり、そうだ」
私は頷いた。
「びっくりしました。
突然別れを切り出されてから10年近く経って・・・
こんなことってあるんですね」
私は深いため息をついた。
「運命・・・だったりしてね」
あはははっと真壁さんは笑った。
「もう、からかわないでください!
彼は、私のことなんかもう、
なんとも思ってないと思いますから」
私はうんうんと頷いた。
そうだ。拓人は私のことなんか、
もう、忘れている。
「彼はさっき、ちゃんと僕に『お久しぶりです』と頭を下げてきたよ。
誰だっけな・・・って僕は最初わからなかったんだけどね」
さっき・・・拓人が?
「と・・・とりあえず、
このあと天文台で太陽黒点を見てもらって、
そのあと、広場で昼食、
その後、科学館を見て終了・・・
そこまでしっかりと私が案内します。
彼のことは、気にしないようにします。
仕事中ですから」
拓人は私のことなんか忘れていると思ったら、
少し気持ちが楽になってきた。
自分ばっかりドキドキして馬鹿みたい。
しっかり仕事しよう。
仕事中、仕事中、
集中集中・・・平常心。