「1/4の奇跡」左側の君に【完】




「そろそろですかね。


私、プラネタリウムの出口で待ちます」





私は、科学館からプラネタリウムの出口へと向かった。






終了の時間になり、




私は、重たい扉をぐっと引っ張ったら、


向こうから、拓人も押していた。





「あ・・」
「あ・・」






・・・目が合ってしまった。







私は、バッと目をそらし、


ドアを開けたままに固定して、


「次は天文台にご案内します」





そう言って、


階段を下りた。







私の後ろから拓人と校長先生、子供たち、その後ろに女の先生二人が続き、



2階から天文台に続く通路を渡った。






天文台に入ると、


お父さんが目を丸くしていた。




私は、お父さんに首を振った。




するとお父さんも察してくれたのか、

小さく頷いてくれた。





私は準備しておいた、パネルをガラガラと引っ張ってきて、


それを見せながら太陽について説明した。



「こんにちは。私は星空天文台研究員の、


葉月と言います」


私の横で、拓人が器用な手つきで手話で通訳していた。


「葉っぱに月と書くので、


本当はお月様の話をしたいところなのですが、


今日は、太陽のお話をしたいと思います。



みなさんは、太陽は何色だと思いますか?」




拓人の手話が終わると、みんな一斉に手を挙げた。


拓人が指をさすとその子が立ち上がり、

何か手話をした。


すると拓人がその子の通訳をして、

「オレンジですか?」と、私に聞いてきた。




拓人に話しかけられた訳じゃないのに、


ドキドキしてしまって焦った。




・・・平常心平常心





「そうですね。オレンジに見える時もありますね。


空の低い位置に太陽がある時は、オレンジや赤、

黄色に見える時もありますが、



太陽は実際には、白と言われています。





その中に黒い点々があるのですが、


それが、これから見てもらう太陽黒点です。


太陽はとっても熱いですよね。


表面温度は6100度もあります。

その中で、少し温度が低い場所が黒くっぽく見えるのですが、


それが、太陽黒点です。


これからこの天体望遠鏡で太陽を見てもらうのですが、

この天体望遠鏡には、太陽を見ても大丈夫なように、

特殊なフィルターが取り付けてあります。


お家の双眼鏡などでは、

太陽を見たりしないように気をつけてくださいね。





では・・・ひとりずつはしごに登って、


望遠鏡で見てみましょう」







< 243 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop