「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「そろそろですかね。
私、プラネタリウムの出口で待ちます」
私は、科学館からプラネタリウムの出口へと向かった。
終了の時間になり、
私は、重たい扉をぐっと引っ張ったら、
向こうから、拓人も押していた。
「あ・・」
「あ・・」
・・・目が合ってしまった。
私は、バッと目をそらし、
ドアを開けたままに固定して、
「次は天文台にご案内します」
そう言って、
階段を下りた。
私の後ろから拓人と校長先生、子供たち、その後ろに女の先生二人が続き、
2階から天文台に続く通路を渡った。
天文台に入ると、
お父さんが目を丸くしていた。
私は、お父さんに首を振った。
するとお父さんも察してくれたのか、
小さく頷いてくれた。
私は準備しておいた、パネルをガラガラと引っ張ってきて、
それを見せながら太陽について説明した。
「こんにちは。私は星空天文台研究員の、
葉月と言います」
私の横で、拓人が器用な手つきで手話で通訳していた。
「葉っぱに月と書くので、
本当はお月様の話をしたいところなのですが、
今日は、太陽のお話をしたいと思います。
みなさんは、太陽は何色だと思いますか?」
拓人の手話が終わると、みんな一斉に手を挙げた。
拓人が指をさすとその子が立ち上がり、
何か手話をした。
すると拓人がその子の通訳をして、
「オレンジですか?」と、私に聞いてきた。
拓人に話しかけられた訳じゃないのに、
ドキドキしてしまって焦った。
・・・平常心平常心
「そうですね。オレンジに見える時もありますね。
空の低い位置に太陽がある時は、オレンジや赤、
黄色に見える時もありますが、
太陽は実際には、白と言われています。
その中に黒い点々があるのですが、
それが、これから見てもらう太陽黒点です。
太陽はとっても熱いですよね。
表面温度は6100度もあります。
その中で、少し温度が低い場所が黒くっぽく見えるのですが、
それが、太陽黒点です。
これからこの天体望遠鏡で太陽を見てもらうのですが、
この天体望遠鏡には、太陽を見ても大丈夫なように、
特殊なフィルターが取り付けてあります。
お家の双眼鏡などでは、
太陽を見たりしないように気をつけてくださいね。
では・・・ひとりずつはしごに登って、
望遠鏡で見てみましょう」