「1/4の奇跡」左側の君に【完】
拓人と花音
次の日。
朝、教室に入ると、
やっぱり和泉は机に顔を伏せて寝ていた。
「おはよ」
私は和泉にそう声をかけながら、
自分の席に座った。
和泉はピクリとも動かない。
「和泉?」
私はとりあえずバッグを置いて立ち上がり、
和泉を上から覗いた。
和泉は窓の方に顔を向けて、
爆睡していた。
起こしちゃまずいかな・・・
そっとしておこうと、自分の席に着くと、
前の席の女子、阿部詩織(あべしおり)
がニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「・・・な・・何?」
「あのさ、葉月さんに協力してほしいことがあるんだけど」
・・・協力?
「何・・を?」
「あのね、うちのクラス、お化け屋敷じゃん」
「・・・うん」
「昨日みんなで残って考えたんだけど・・」
そう言って阿部さんは、私の机に紙を広げた。
「ここ、お化け屋敷の入口。んで、こっちが出口。
最初は日本で、幽霊系妖怪系ね。
んで、こっから西洋の世界になるの」
「せいよう?」
「そ。
フランケンとか、狼男とかは決ってて、
でね。
葉月さんには、ジャーン!」
そう言って阿部さんは、紙袋から白いドレスをだしてきた。
「・・・なに・・これ?」
「ロリータドレス」
「・・・だっ・・だね・・」
「だね!!」
阿部さんはドレスを広げてかわいく首を傾げた。
「呪われたフランス人形みたいにしたいの。
で。みんなでこのクラスで、
ロリータファッションが似合いそうなのは・・って
考えたときに、
葉月さんって、背が小さくてさー」
・・・え。
「髪の色とか、巻具合とかさー」
・・・なんか・・嫌な予感・・・
「葉月さんぴったりじゃないかって!」
・・・・え。
えええええええーーーーー!!!
「私、無理」
「なんでー。そんなこと言わないでよ。
文化祭はみんなで協力するものでしょ?
ちなみに和泉くんは、葉月さんの次に出てくる
ドラキュラになってもらうから。
ね!和泉くん!!」