「1/4の奇跡」左側の君に【完】
・・・・結婚
「拓人・・・」
私が呼ぶと、拓人は「うん」と頷いた。
本当の別れの理由、
拓人の想いを知って、
涙があふれてきた。
お父さんとお母さんは俯いてしまった。
「反対される気持ちはわかります。
本当に申し訳なく思っています」
お父さんは、顔を上げた。
「遺伝子検査・・・
確率・・・
優性・・・劣性・・・
そうか・・そうだったのか・・・
それなら・・・
そうか。
もしかして、それを卒業前に聞いて、
花音と別れることにしたのか」
拓人は「はい」と頷いた。
「どうして、あの日、天文台でそれを言わなかった。
どうして、何も言わずに俺に殴られたんだ。
ちゃんとそれを説明してくれればよかったじゃないか」
拓人は、少し考え込んでしまった。
「花音にも、言ってなかったのか?」
「はい」
「君ってやつは・・・
なんでそんな・・・
そうか。そうだったのか」
お父さんはそれからしばらく黙り込んでしまった。
「本当は、花音さんが他の人となんて、
考えたくありませんでした。
でも、
片耳不自由で、難聴遺伝子を持っている自分なんかよりも、
普通の健康な人と幸せになった方が花音さんのためなんだと、
何度も言い聞かせて、
別れを決意しました。
でももう、花音さんを誰にも渡したくないです。
自分勝手なことを言っていることは、よくわかっています。
もし、お父さんが子供を作るなというなら、
僕は・・」
「お母さん、ビールを持ってきなさい」
お母さんは「え?」とびっくりしていた。
「拓人くんは、飲めるか?」
拓人も驚いていた。
「え・・・・いえ・・・今日は運転なので」
「明日、休みなんだろ。
泊まっていけばいい。
俺は、娘の結婚相手と酒を飲むのが、
ずっと夢だったんだ」