「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「高校卒業後の春休みに、拓人くんが天文台にきたことを、
黙っていて悪かったな」
お父さんは、ゆっくりと語りだした。
私は「ううん」と首を振った。
「拓人くんが、花音には言わないでほしいと言っていたし、
そんなこと、花音に言える状況じゃなかった。
かなり、落ち込んでいたからな・・花音」
「うん・・・そうだったね・・・」
ずっと部屋に引きこもって泣いてばかりいた春休み。
その時、拓人が天文台に行ったなんて、
思ってもみなかった。
「拓人くんは、ひたすら謝っていたよ。
それに、とにかく花音の幸せを願っていた。
頭にきて殴ってしまったんだが・・・
悪かったな・・・
拓人くんにはつらい決意があったんだな・・・
本当にかわいそうなことをしてしまった。
遺伝子のこと、花音はいつ知ったんだ?」
「昨日・・・なんとなく聞いた」
「1/4の確率と言っていたから、劣性遺伝のことだ。
大学でやっただろ?」
劣性遺伝・・・?
・・・なんとなく聞いたような・・・
「劣性遺伝のことも、
拓人くんは、説明していないんだろ」