「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「ただ、難聴遺伝子を持っているから、
耳の聞こえない子が生まれやすいって言ってた。
でも私、
だったら
だからこそ、
拓人を支えてあげたいと思った。
お父さんには、心配かけるかもしれないけど私・・・
拓人となら、どんなことがあっても、
私、
頑張れると思うんだ」
お父さんは「そうか」と笑った。
「花音。
劣性遺伝なら、両親共に難聴遺伝子を持っていないと、
問題は起きないんだ。
つまり、花音が持っていなければ、
一般の出産と確率は同じだ。
それを花音にも説明すればいいのに。
拓人くんのことだ、
もし、耳の聞こえない子が生まれた時、
自分だけの責任にしておきたかったんだろう。
天文台で俺に殴られても、
何も言わなかった。
言い訳ひとつもしないで、
ずっと謝っていたよ。
花音の幸せを願って。
そう思うと、
拓人くんは、ずっと
俺との約束を守っていたんだ。
自分のことよりも、
一番に花音のことを思っている。
ずっと、花音を大切に思っていたんだな」