「1/4の奇跡」左側の君に【完】
広場を抜けて、森の中に入ると、
小さなライトの上に、
白壁のかわいらしいコテージが並んでいるのが見えた。
二つ目のコテージの鍵を開けて電気をつけると、
小さな部屋がほんわりと明るくなった。
小さなキッチンとトイレとシャワー室、
二人掛けのソファーの前にローテーブル。
そしてベッド二つ。
ベッドの上は大きな天窓になっていて、
寝ながら星が見られるようになっている。
拓人は重そうな私の荷物を、ソファーの脇に置いた。
私はバッグを開けて中身を確認した。
すると、洋服や洗面道具、
その脇に保冷バッグが入っていて、
中をあけると、飲み物や、おかず、ごはんが入った、
タッパーが積み重なっていた。
「お母さん・・・・・」
お母さんの優しさが嬉しくて、胸がいっぱいになった。
私たちはお母さんのごはんを食べて、
星を眺めに外へ出た。
しばらく森の中を、
足元の小さなライトを頼りに広場へと歩いた。
広場に出ると、
何度か座った科学館寄りのベンチではなく、
コテージ側のベンチに座った。
ここからの方が、明かりが少なくて、
星がよく見えた。
私は首から紐を引っ張って、
久しぶりに私の元に戻ってきた星時計を夜空に向けた。
小さな穴に北極星を合わせようとしても、
嬉しさに涙が溢れてきてしまって、
瞬きするたびに涙が目尻からこぼれて、
なかなか合わせられずにいたら、
隣から拓人が星時計を持った。
そして、穴を覗き込んで、アームを合わせた。
「だいたい・・・11時だ」
拓人は星時計を私に戻した。
私は、目をこすって笑った。
暗さの濃い夜空には、
東西にうっすらと冬の天の川が横に流れていた。
そして、東の空にオリオン座と、一際輝いた木星が見えた。
「あの、薄く横に伸びているのが天の川か・・・」
拓人が空を見上げて言った。
「うん。夏の方がもっと見やすいんだけど・・・」
「初めてみたよ・・・天の川」