「1/4の奇跡」左側の君に【完】
拓人は、扉をそのまま押して、
非常階段の方に入ってきた。
ガッチャンと扉が閉まり、
にぎやかな廊下の音が消えた。
「体調が悪そうだからって、
阿部が心配してたぞ・・大丈夫か?」
拓人が顔を覗き込んできた。
体調・・・そっか・・
阿部さん・・気を使ってくれたんだ・・・
優しいんだな・・
「体調は・・大丈夫」
しばらく向き合ったまま沈黙が続いた。
「座るか」
拓人が階段に座ったから、
私も隣に座った。
「お前さ、さっき俺と目が合ってすぐに逃げただろ」
・・・やっぱり拓人にバレていたんだ。。。
「だって・・見ちゃいけないような気がしたから・・」
「なんでだよ」
拓人が隣から顔を覗き込んできた。
私は少し顔をそらした。
「見ちゃいけないっていうか、見たくなかった・・
あんなの・・見たくない。
私・・拓人が好きなんだよ・・」