「1/4の奇跡」左側の君に【完】
急いで教室に戻ろうと走り出すと、
廊下の途中で、莉子と詩織に会った。
詩織は自分のバッグと私のバッグを、
莉子は自分のバッグと私のマフラーを持っていた。
莉子と詩織は、
「和泉に会えた?」
と、同時に言ってきた。
「うん。下駄箱で待ってる」
その言葉を聞いて、詩織と莉子は顔を見合わせて笑った。
詩織が私に「はい」とバッグを渡してきた。
「ありがと・・」
莉子は私にぐるぐるっとマフラーを巻いてくれた。
「和泉と毎日帰る約束しな。
あと、アドレス!
アドレスは聞いてもいいんじゃない?」
莉子がマフラーの形を整えながら言った。
「そうかな・・」
3人で歩き出した。
「どんどん押してかなきゃ。
誰とも付き合う気がないって言っても、
気が変わるかもよ?
花音の頑張り次第で」
「頑張り次第・・?」
「そうだよー。手をつなぐーとか」
詩織と莉子が手をつないだ。
「寄りかかるーとか」
詩織と莉子は肩を寄せ合った。
そんなことをしながら、
3人並んで階段を降り、下駄箱に行くと、
拓人が下駄箱の横に寄りかかって立っていた。
「じゃあ。先行くね。
またね、和泉」
詩織がそう言うと、拓人は軽く頭を下げた。
莉子も隣の下駄箱から出てきて、
手を振って詩織と行ってしまった。
私は拓人の前に立った。
「ごめんね。誘ったのに待たせちゃって・・」
拓人はゆっくりと下駄箱から体を起こした。