「1/4の奇跡」左側の君に【完】
先に校舎から出た拓人の後ろから、
ゆっくりと外に出ると、
冷たい風に思わずマフラーを抑えた。
中庭を通り、時々枯葉を踏んでは、
クシャリと靴の底で感じる感触。
小さい頃からこの感触が好きで、
小学生の頃は、わざと何枚も踏んづけては、
くしゃりくしゃりと楽しんでいた。
あ・・拓人も今枯葉を踏んだな・・
拓人もこの感触が好きだろうかと、
隣から拓人の顔を覗き込んだ。
一緒に帰るのは、文化祭前のあの日以来。
あの時見た横顔よりも、少し髪が伸びて、
童顔に感じていた顔が、
前髪が伸びたせいか、
少しだけ大人っぽくなったような気がした。
「拓人、葉っぱ踏むの好き?」
「はあ?はっぱ?」
マフラーの上から横目でチラッと私を見た。
「枯葉を踏むとさ、クシャって」
そう言った私に、拓人は首を傾げた。
「別に」
「そっか・・・」
ちょっとがっかりして、下を向いた。
「じゃあさ、拓人は何が好き?
どんな音楽とか聞く?
食べ物だったら何が好き?
拓人の好きなものって何か知りたい」
拓人は一度上を向いた。
学校を出て、ショッピングモールの横を通って、
その先はもう駅。
なんでこんなに駅まで近いんだろう・・うちの学校。
今までは近くてよかったって思ってたけど、
今はもっともっと遠ければいいのに・・って思う。
「やっぱ俺は・・バスケが好きだったかな・・」