「1/4の奇跡」左側の君に【完】
家族
「ただいまー」
拓人とホームで別れて、
1時間後に家に着いた。
可愛いレンガの門を通って、
小さなステンドグラスがはめ込まれた玄関扉をあけると、
夕御飯のいい匂いがしてきた。
リビングに入ると、カウンターキッチンの向こうで、
ベージュ色のエプロンをつけたお母さんが料理をしていた。
「おかえり。遅かったから心配しちゃったじゃない。
遅くなるときは連絡しなさいね」
小柄でかわいいお母さんがそう言って微笑んだ。
家中がカントリー調なのは、お母さんの趣味だ。
小さい頃は何も感じなかった小物たちが、
最近はかわいらしく思えて、
お母さんは趣味がいいと感じるようになった。
「あっ!」
私はうっかりしていたことに気づいた。
「どうしたの?」
「アドレス聞くの忘れた・・・
帰りの約束も・・はぁ・・・」
拓人の部活のことで、すっかり忘れていた。
「また、明日声かけるか。。。」
お母さんは、器に料理をよそりながら、
にこっと笑った。
「なあに?彼氏ができたの?ふふっ」
「彼氏じゃないよ。好きな人ができたの」
私はひとつつまみ食いをした。
「ちょっと、こら!お箸でちゃんと食べなさい!」
ぺしっとおしりを叩かれて、
「はいはい」と言いながらリビングを後にして、
階段を上って自分の部屋へ着替えに行った。