「1/4の奇跡」左側の君に【完】
アドレスを聞くのに、ものすごく緊張した。
拓人にアドレスを聞いて気づいた。
そういえば私って自分からアドレスを聞いたことがない。
聞いたらどう思われるかなってことが、
先に頭に浮かんでしまって、
自分から聞くことができずにいた。
聞かれたら教える、
そういう感じでずっとやってきた。
だから、今すごく緊張していて、
携帯を持つ手に汗をかいていた。
拓人はバッグから生徒手帳をだして、
そこに書き込みだした。
そして、ビリビリっとそのページを破いて、
私に「ん」と渡してきた。
破り取られた紙には、
アドレスと、携帯番号が書かれていた。
「俺の赤外線ついてないから」
・・・そうなんだ。
びりびりっと雑に切り取られた一枚の紙が、
私にはすごく特別な紙に思えた。
拓人のアドレス
拓人の書いた文字
少し尖った文字が、
拓人らしいと思った。
「メールしてもいい?」
「いいよ」
「いっぱいしてもいい?」
拓人はふっと笑って頬杖をやめた。
「いいよ」
その言い方がすごく優しくて、
好きな気持ちがまた、
膨らんでしまった気がした。