「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「ちょっとすみません・・ちょっと・・」
詩織と一緒にその人だかりをかき分けて、
中に入っていった。
すると、
拓人が夏目先輩を壁に押し付けて、
胸ぐらを掴んでいた。
「拓人!!」
私と詩織は、拓人と夏目先輩を引き離そうとした。
それでも、拓人の力が強すぎて、
二人がかりでも、引き離すことができなかった。
「お前!!なんでそんな噂流してんだよ!!」
拓人は、夏目先輩に怒鳴った。
夏目先輩は、ふっと笑った。
「俺が先に目をつけてたんだよ、お前の大事な花音ちゃんに。
莉子ちゃんもいいなって思っていたんだけど、
ふたりして全然俺を見ないから・・
ちょっと困らせてやろうって。
ほんとにちょっとだよ。
『すっげー遊んでいる女たちなんだぜ』って
ちょっと周りに言っただけだよ。
まあ莉子ちゃんは彼氏がいるから仕方ないとして、
花音ちゃん彼氏いないのに、全然こっち見ないから。
ちょっとイラっとしてね。
俺が目をつけた子は、だいたい落ちるんだけど。
俺を振るなんて・・・むかつくんだよこの女。
お前・・・何様なんだよって。
ムカついたから、もう花音ちゃんとやったってことにして、
女友達に話したら、あっという間に広がってさ・・」
拓人がもっと強く胸ぐらを掴み始めたから、
詩織と一緒に力いっぱい拓人を抑えた。
「うそだったって言えよ。
そんな噂話、お前が勝手についた嘘だったって。
ここでみんなの前で言え!!
そして、花音に謝れよ!!!」
夏目先輩は、へらへらと笑った。
「はいはい。
全部嘘でーす。
花音ちゃんごめんねー」
「夏目ってひでーな」
「夏目くんサイテー」
「最悪な男だな、夏目って」
そんな声が聞こえてきた。
「またこんなことしたら、ぶっ殺す」
拓人が勢い良く夏目先輩のワイシャツを離した。
「おいこらー!!何やってんだ!!
チャイム鳴ったぞ!!
教室入れよー!」
先生が来て、
生徒達が、さーっと散らばっていった。
夏目先輩は
「おーこわっ」
と、言いながら、教室へと戻っていった。
廊下に詩織と拓人と3人だけになった。