「1/4の奇跡」左側の君に【完】
いつものように駅に隣接している駐輪場に自転車をとめ、
改札を抜けてホームを見回すと、
遠くのベンチに拓人っぽい足の長い人が座ってるのが見えた。
ちょっと小走りして近づいていくと、
やっぱり拓人だった。
座ったまま拓人がこっちを見上げた。
・・・今日はいつもよりもっと、
髪がふわふわツンツンしてしてる・・
ベンチから足を伸ばして座っている拓人。
紺色と白のチェックシャツ
開いた首元から
グレーのTシャツが見えて、
その上に少しタイトな、
カーキ色のミリタリージャケットを着ていた。
長い脚には、ヴィンテージ加工されたデニムと
その先にキャメルのマウンテンブーツ
拓人の隣に座って、拓人の左手に指を絡ませた。
「お前さー、寒くねーの?」
確かにベンチに座っていると、
コートでショートパンツが隠れて、
自分の脚が生々しく露出されているように見えた。
でも、自転車をこいできたせいか、
正直そんなに寒さを感じてはいなかった。
「寒くないよ?ほら」
私は拓人の左手を自分の太ももにのせた。
「っっ!やめろって!」
拓人はバッと手を離した。
「冷たくなかったでしょ?」
拓人はせっかくふわふわと、
かっこよく決まっていた自分の髪を、
くしゃくしゃにしてしまった。
「わっかんねーよ・・・っんなの・・・」