「1/4の奇跡」左側の君に【完】
拓人の髪が気になって、
隣から覗き込んで、髪を触った。
「・・っんだよ。さわんな」
拓人はその手を掴んで下ろした。
それからそっぽを向いてしまって、
せっかくの初デートなのに、
最初から不機嫌で、悲しくなった。
「拓人のバカ・・」
泣きそうになって、うつむいた。
下を向くと、朝頑張って巻いた髪が、
ふわふわっと崩れかけているのが見えた。
・・・私の髪も崩れてんじゃん・・最悪。。
「俺さ・・・」
さっきとは違って、
優しい拓人の声がしたから、思わず拓人を見た。
誰もいないホーム。
太陽に向かって座っていたから、
拓人は少しまぶしそうな顔をしていた。
「花音とつきあうことになっただろ・・」
「うん」
「一緒にいるとさ・・」
「うん」
「調子狂うんだよ」
・・・・・・?
私は首を傾げた。
その時、電車が来るアナウンスが流れた。
拓人が立ち上がった。
スっと立ち上がって振り向いた拓人の私服姿は、
まるで雑誌の1ページを切り取った様に見えた。
拓人が左手を伸ばした。
「お前のことばっか考えてるよ」