「1/4の奇跡」左側の君に【完】
拓人の向こうに電車が走ってきて、
ゆっくりと止まった。
・・・お前のことばっか・・・
拓人の伸ばした左手を掴んだら、
指を絡ませて手を繋いでくれた。
嬉しかった。
私・・自分ばっかり拓人を好きだと思ってた。
だって、一度も「好き」と言ってくれないから・・
だからすごく
嬉しかった。
電車のドアが開き、
空っぽの電車に乗り込んだ。
拓人は椅子の隅に私を座らせて、
私の右側にどかっと座った。
お父さんのいる天文台は、
ここから二つ目の駅で降りて、
バスで20分行った森の中。
10分程の電車内。
さっきの言葉を思い出しては、
嬉しくなって。
拓人の顔を覗き込んでは、
「見んな」って怒られて。
もうちょっとこのまま
電車に乗っていたい・・・
そんなことを考えていた。