『歩』〜人は愚か〜
父の死

記憶の片隅

私が3才の時、父は死んだ・・・・





いつも帰りに玄関に父を迎えに行くと

父は決まって私にバラガムをくれた。

それを私の小さな手から盗むのは兄だった

私が泣くと父は必ず大きな手を私に伸ばす・・・・・

私の記憶はそんなもの。

今は父の顔は写真でしか覚えていない。



父が突然バイクに跳ねられて意識不明に重体だと知った時の事は覚えていない。


ただ、父か家帰らなくなって何日か経って

白いベットの上でいろんな機会が繋がって顔さえよく見えない父の上にまたがるように私は座らされた。

何も知らない私はただ父に会えた嬉しさで
毎朝父を起こすように

「おきて~あそぼ~」

と体を揺らした事だけは覚えている

その姿を見て何人かの人が泣いていた

でも、なぜ泣いているのか私には理解できなかったんだ。


「もう楽にしてあげてください」

と母か祖母が先生に言った

そこ事がどう言う事なのかもわからなかった

だから、ただ私は父を起こし続けたんだ

小さすぎる自分の手で・・・・








< 1 / 56 >

この作品をシェア

pagetop