『歩』〜人は愚か〜
引越しをしてからも記憶は疎らで

小学校は学区が変わり、同じ市なのに転校した。


それを期に、私は完全な不登校になったのだ。

生きる事に、食べろものがない事に、

父が死に、母が帰ってこない事に耐えられないほどだったんだと思う。


凄く惨めだったのは、
炊飯器にカピカピのお米が入っていて
それに、コンビーフの缶詰を混ぜて少しずつ4人で分け合った日の事だ

私は、まるで最後の晩餐のようにこの日を忘れない・・・・

炊飯器を4人で抱えていた事

その惨めさを

忘れる事は、できなかった・・・・・



次の日、どうにもならなくなり

小さい姉ちゃんが父方のおばあちゃんに電話を掛けた


おばあちゃんは、電車代もない私達にタクシーで

父の弟が働いているところまで行くように伝えた。


私と小さい姉ちゃんとだけでそこに行った事は

うっすらと覚えている。


父の弟は怒りに震えながら、私達にお金をくれた。

職場のおばさんは話を聞いて、同情してくれた。


同情は、ちっとも嬉しくなかったけど

助けてくれた叔父さんは神様のようだった。

それから、父方のおばあちゃんだけが私達の救い人だった。


そんな事になっていても、

母は帰ってこない日が続いていた・・・・
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