『歩』〜人は愚か〜
私の記憶はまだある・・・


たぶん父の葬儀の日だ



今と違って、葬儀は自宅で行われていた

私は、姉が2人兄が1人いる。

大きい姉ちゃんと、小さい姉ちゃんは葬儀に出ていたのだろう

その日2人の顔は見ていない。


姉達は私より8才と6才上だったからいろんな事が理解できていたんだと思う。

兄は4才上だった。


兄も葬儀には少し出ていたようだ

でも、私が独りにならないように、たまに私を見に来て遊んでくれた。

私は、知らないおばさんと和室にいた。


だから、きちんと父とさよならができなかった。

その事を今でも少し悔いている


でも、小さすぎた私に誰も私の心の声なんて聞いてはくれなかった

たぶん聞かれたとしても

3才の私には理解する事も、

うまく伝える事もできなかったのだろう。

その日は、やたら白い障子と知らないおばさんと黒い半ズボンを履いた兄しか覚えていないが、父の葬儀だったのは確かな記憶だ。

そして、父とのその日が最後の思い出なんだ。

< 2 / 56 >

この作品をシェア

pagetop