『歩』〜人は愚か〜
朝、目を覚ますと私は2階の布団で寝ていた
昨日は1階で眠ったはずだった

いつもは私の様子なんて見に来ない姉が私の体を揺すり

「下に来なさい」
と静かに言う

何だろう・・・
違和感が私を襲う
学校に行くまでには時間がまだある

こんなに早く私を起こすなんて変だ

私は目を擦り、ゆっくりと階段を下りる



今でも目を瞑ると思い出せるその異様な空間

私はまだ夢の中に居るんじゃないかと思った瞬間。

そして、布団に横たわる母の姿

ねぇ。私は今何してる?

ねぇ。なんでみんなで寝てる母さんを見てるの?

ねぇ。教えて欲しい、取り返しが聞く時間があるなら聞きたいことがあった

母さん・・・・あなたは幸せでしたか・・・・?

横たわる母を私は立ったまま見下ろした

眠っているみたいだった
安らかな死に顔だった
そのことに少しほっとしたのを覚えている

「昨日夜中に病院で・・・」
その後お姉ちゃんなんて言ったかは覚えていない

「今日は学校に行きなさい」
そう言われてお姉ちゃんは立ち上がった

「大丈夫だから・・・」
何の根拠も無い大丈夫と言う言葉がお兄ちゃんの口から零れた

「今日は寄り道しないで帰って来い」
そう言ってお兄ちゃんも立ち上がる


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