『歩』〜人は愚か〜
「どうして・・・どうして私を起こして病院に連れて行ってくれなかったの?」
お兄ちゃんの背中に問う

「昨日は運動会で疲れてぐっすりお前は眠っていた」
そう言う兄の背中がいつもより小さくて
私は不安でたまらなくなった

私は、これからどうなるんだろう
小学生の私には見えていないたくさんの恐怖があった

最後まで勝手な母親だと責めてやりたかった
そして
それでも、今のこの瞬間が夢であって欲しいと思った


でも、夢じゃない

「これ食べて学校に行きなさい」
私にパンを渡すお姉ちゃん

今まで、こんな風に朝食を用意してくれたことなんてなかったから
不自然に優しいお姉ちゃん

兄は私がパンを受け取ると2階の自分の部屋に上がっていった

「いい。まっすぐ帰ってきなさい」
何度も念を押され私はいつもより早く家を出され学校へと向かった
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