SA-KU-RA〜これが俺の歩む道・これが私の歩む道〜
数日後・・・。


今夜も、お店はいつもと変わらない時間が流れていた。


「いらっしゃいませ。」


店内を動く黒服が、私が接客してる席の側で、立ち止まって頭を下げた。


私の側を、一人のお客様が奥の席へと進んでいった・・・。

かすかに・・・

ほんのかすかにだけど、懐かしい匂いがした・・・。

あっ!!!!


心生??


だよね??


私は、一人奥の席に向かう心生の後ろ姿をずっと眺めていた・・・。


心生が座った席には、赤いコースターが置かれた。


赤いコースター・・・。


それは、お客様が誰かを指名して入店してることを意味する。
フリーのお客様は黒いコースター。
そういう風に色分けすれば、お店の女の子も何かと接客しやすい。
お店の女の子の意見で最近導入された。



えっ??指名っ???


私は、心生の席の方に向かう・・・


モエを目で追っていた。



心生のもとへ行くなり、何やらモエは心生の耳元で喋り出したっ!!
しかもっ、かなり心生の体に自分の体を密着させて・・・。


えっ??何なのあの二人っ??


そして、モエは黒服にお客様がお帰りになる時の合図を出した。

えっ?もう帰るのっ?
二人は何を話したの?


心生が再び私の側を通過していくっ。

心生は私に気付くことはなかった。


モエを指名して来店した心生!!
私に気付いてくれなかった心生!!


何か・・・


凄くショックだった・・・。


私は、ショックを隠しきれないまま、少し離れた場所で接客している、マナミさんに目をやった。


マナミさんは、ずっと私を見てたかのように私を見つめていた・・・。
< 54 / 55 >

この作品をシェア

pagetop