白と黒の神話
「王子、そのあたりにしておきなさい。ここで揉め事をおこしたら強制送還ですよ」

「ウィア……お前、人を脅すのか」

「見苦しいことをしてほしくないからです。後はセシリア殿にお任せしなさい」


 そう言うなり、ウィアは抵抗するカルロスの首根っこをつかまえている。そんな二人のやり取りをみていたシュルツは面白がっているような表情を浮かべていた。


「人間というものはみていて飽きないね。だからこそ、可能性もあるんだがね」


 カルロスをからかっていた時とはまるで違う口調。そのままの口調で、彼は言葉を続けていた。


「そこの元気なお兄さんに免じて、教えられることは教えてあげるよ」

「本当なの?」


 急に態度が変わったことに驚きを隠せないセシリア。彼女と一緒にいたミスティリーナも同じような表情を浮かべている。


「疑い深いね。まあ、その方が安全だけどね」
< 115 / 314 >

この作品をシェア

pagetop