白と黒の神話
 自分の背後から聞こえる声に、セシリアは驚いたように振り返っている。休んでいるものと思っていたカルロスがそこにはいるのだ。一体、何を考えているのだろう、と言いたげなセシリアの視線を彼は気になどしていないようだった。


「お前にしたらショックなことをきかされたわけだ。お前ほどじゃないが、俺にしてもそうだがな」

「…………」


 カルロスの言葉にセシリアは応えようとしない。そんな彼女に、彼は真剣な顔で声をかけていた。


「信じてもらえないかな? 俺は本気で好きなんだけどな」

「えっ?」


 その言葉は誰に対してのものなのだろうか。

 彼の口ぶりは目の前の相手に対するもの。しかし、彼はアルディスのことを好きだと公言しているのではなかったか。それでも、面と向かってそう言われたらドキドキするのは間違いない。かすかな月明りの中でもはっきりとわかるくらいセシリアは頬を赤くしていた。
< 137 / 314 >

この作品をシェア

pagetop