白と黒の神話
「心配するな。お前を口説いているわけじゃないからな」

「な、何を!」

「たまにはそんな顔をするのもいいだろう? そうやっているところは、いつものお前とはまるで違うからな。女らしいし、色っぽいと思うぞ」


 そう言うなり、カルロスは悪戯っ子のような表情を浮かべている。それをみたセシリアは、自分がからかわれているのだということにようやく気がついていた。


「カルロス様、冗談はほどほどにしてください」

「でも、気分が変わっただろう。あんまり、辛気臭い顔をしていると見ている方がしんどい」

「だ、だからって……」


 理由はどうあれ、それならもっと言葉を選んでほしいというのがセシリアの本音だろう。そして、カルロスの言葉に一瞬でもときめいてしまった自分に呆れてもいるのだった。
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